第110章

「おまえ、正気じゃないわ!」田中友里子が怒気を孕んだ声で噛みつく。「あんなの、行き場のない尻軽よ。子どもも産めない役立たず。――それでも欲しいって?」

あまりにも下品で、あまりにも残酷な言い草だった。隣で酔いつぶれかけていた青山大輔でさえ眉をひそめ、重いまぶたをこじ開けるようにして、そんな言葉を吐ける女の顔を見ようとしたほどだ。

田中辰哉も眉を寄せ、反射的に大島莉理へ視線を向け――そこで、ふっと息を呑んだ。

怒っていない。

大島莉理は、揉め事を笑って受け流すような、都合のいい柔らかい人間じゃない。むしろ、どこか執念深い。やられたら、きっちり返す。

加藤柚奈に原稿を盗まれたときだって...

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